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    Writer

    子どもの本や

    翻訳小説について

    書いています

    works in Japan

     

  • What I Do

    1967年生まれ。子どもの頃からの本の虫。翻訳会社、損害保険会社、食品会社を経て現在に至る。

     

    仕事内容:

    児童書書評の他、作家インタビュー、翻訳小説のコーディネートなど。

  • Directorial Work

    A selection of projects and editorials I've been involved with:

    Ashes and Snow

    Gregory Colbert

     

    小説「Ashes and Snow」

    翻訳

    小竹由美子

    編集

    林さかな

    オズの魔法使い

    全15巻

    復刊ドットコム刊

    ライマン・フランク・ボーム 著 

    翻訳

    宮坂宏美

    ないとうふみこ

    田中亜希子

    挿絵

    サカイノビー

     

    編集協力:林さかな

    書評

    2005年2月より

    Web本の雑誌にて

    文庫本新刊書評を1年間担当

     

    2006年10月より

    同サイトにて

    単行本新刊書評を1年間担当

     

    2010年より現在

    書評のメルマガにて

    「いろんなひとに届けたい

    こどもの本」連載中

     

  • Book review

    書評のメルマガより

    少年民芸館

    毎日の暮らしを励ましてくれるもの

    『少年民芸館』外村吉之助 (筑摩書房)

     倉敷民芸館、熊本国際民芸館の創立者で初代館長の外村吉之助氏が書かれた『少年民芸館』は、美術館を訪問するように何度も読み返している一冊です。

     

     ――人間は誰でもみな丸裸で生まれて来ますけれども、必ず多くの道具を使い、それにたより守られて、長い一生を暮らしています。――

     

     外村氏はこのようにまえがきで書かれ、

     「形も色も良く、たよりになる健康な美しい道具」として、世界中から集めた美しい工藝品を、少年少女たちに向けて平易な言葉で簡潔に紹介しています。

     

     民芸――この言葉は柳宗悦氏が「民衆的工藝品」とよんだものをちぢめた言葉で、民衆がつくり民衆が使うところからきたそうです。芸術家とよばれる人たちではない人がつくったもの、描いたもの。民が長い間つくり、使ってきた道具にある美しさを、私はこの本を通していつも深く感じ入るのです。

     

     たとえば、名もない人が暮らしのために描いた絵は民画とよばれ、一般の生活に深く結びついているとして、ドイツの成人式の祝皿の写真があります。

     直径45センチもある大皿に描かれた羊飼いの絵は牧歌的でおおらかです。みていると、口笛をふいてみたくなるような気持ちになる心地よい絵です。皿のまわりには細かい模様や数字が描かれており、これは数字と祝いの言葉がつらなっているもので、外村氏は大皿をしっかり守るための厳しい仕事として――このような数物の美しい整いは一朝一夕のものではなく、暮らしや仕事の長い背景があってのことです――と教えてくれます。

     

     心を変える道具として紹介されているのは日本の湯のみとおかずの鉢です。


     誰でも毎日手にし、口にするもの、こういう日々使うものは、心も変えていく。
     

     だからこそ、働き者で丈夫な道具が重宝します。

     

     わが家にある急須もよく働いてくれます。地元の窯で焼かれたもので、お湯のきれもよく、形も機能的で美しい。家族のため、自分のためにお茶をいれるのは毎日の小さなよろこびです。

     

     ――用うるものが美しい。――いまは安価に手に入るものが多く、ついそれにたよりがちですが、美しく機能的なものを持つことはやはり違います。

     

     立ち止まって、美しい物をみる、手元に求める、使う。毎日の生活の楽しみはそういうところからはじまるのですから。

     

    2010/07配信
     

    隊を組んで歩く妖精達

    幸福な人になる

    『隊を組んで歩く妖精達其他 アイルランド童話集』

             イエイツ 編/山宮 允 訳/岩波文庫

     今年はなんだかとても気ぜわしく日々がすぎていってます。
     

     仕事のほかに、子どもの学校関係、地区の子供会と当たり年のように役をいただき、週末ごとに行事があるからでしょう。
     

     なかなかひとりで本にひたることもままならないせいか、何度か読み慣れたものを再読しています。慣れ親しんだ友とのおしゃべりをするような楽しさが再読にはあるからです。

     

     なかでも、アイルランド童話集は何度も読み返しています。

     このなかの「ティーグ・オケインと妖精達」というお話が秀逸です。

     

     裕福な家柄の息子、ティーグ・オケインは親からたいそう甘やかされて育ちました。そのおかげで、成長しても野良仕事より野外遊戯を好むようになり、とにかく毎日贅沢にお金を使って遊び暮らしていました。また、たいそうな美男子だったので、村の娘たち誰もかれもがティーグ・オケインに思いよせるほどでした。ところが、ティーグ・オケインが近所の娘を辱めたという噂が父親の耳に入ります。父親は息子に責任をとらなければ、何も残してやらないと言い放ちました。ティーグ・オケインは途方にくれました。そして心を静めるために夜中、外をただひたすら歩き続けたのです。


     事はその夜中の一人歩きから起こりました。
     ティーグ・オケインは妖精と出会ったのです……。

     

     妖精達はティーグ・オケインに奇妙で厳しい注文をつけます。良くない生活をしているティーグに仕事をいいつけます。ティーグ・オケインは大きな労苦をはらってその仕事をやりとげ、幸福な人になるのです。

     

     あらすじの大事なところをここで書いてしまっても、このお話の魅力は損なわれません。語り口のおもしろさ、山宮氏のコクのある翻訳は、声に出してこそ読んでほしい魅力があります。

     

     声に出して読むと30分以上かかるお話ですが、私はこのお話を最初に耳から聞いたのです。半世紀以上、こどもの本にたずさわってきた方に、初めて読んでいただいたとき、ぞっとする怖さを感じつつ、最後の閉め方に深い幸福を味わいました。

     

     その気持ちが忘れられなくて、私も何度かこのお話を友人に読んだことがあります。誰かのために読んだり、自分のために読んだり、いつでもとびっきりのおもしろさがあるティーグ・オケインのお話は、物語ってなんていいものなんだろうと思わずにはいられません。

     

    2010/09配信

    人は夢見、希望し、幸せになる

    『大人に贈る子どもの文学』猪熊葉子(岩波書店)

     

     大震災がおき、未曾有の事故はいまだ収束しておらず、多くの人があの時から人生が変わったのではないでしょうか。
     大震災以降も自然災害は頻発しています。台風、豪雨、噴火、地震と、短い間に次々あちこちに災害が起こっています。
     
     著者はだから今こそ子どもの本をという思いで書かれたそうです。

     自身の子ども時代の体験を踏まえ、児童文学研究者としての長いキャリアをもつ著者は子どもの本がどれだけ生きる力をもたらせてくれるかをよく知っています。そしてその力は大人にも有効であることも。

     

     子どもたちも毎日いろいろあるでしょうし、
     大人たちも同じようにつかれている――。

     

     そんなとき、
     気分転換であったり、いい気分にさせてくれるものであったり、具体的に値するものは人それぞれかもしれませんが、子どもの本はそのひとつにどうかと指し示してくれているのが本書です。

     

     なぜ大人にも子どもの本が有効なのか。

     

     クロスオーバー・フィクションという言葉が出てきます。
     

     著者のさしあたりの訳として大人と子どもが共有できるフィクション、この新ジャンルは「ハリー・ポッター」が出現以降にできたそうです。
    (ただし、新ジャンルとしての認識は近年のものだけれど、このジャンルに相当する文学はもっと以前からあったようですがそれは後で書きます)

     

     子どものみならず大人も多くの人がハマった「ハリー・ポッター」。
     この物語がどうして多くの大人の読者を獲得できたのかは、まだこたえがでているわけではないのですが、

     

     興味を引いたこたえのひとつに著者は、

     

     消費社会のグローバリゼーションの影響をあげている研究者がいることを教えてくれます。

     

     グローバル化した地球を自由に移動して生きる人たち

     地域社会にしばりつけられている人々、
     

     この二極化された社会のなかで、
     新中間層の人々は、自分たちの存在の不確実性に悩んでいる、
     

     そういう人々にとって
     「それまで存在を知らなかった経験を生きることには無数の楽しみ」がある。
     

     それが「ハリー・ポッター」にはあったのではないだろうかと。

     

     なるほど。

     

     そう思ったあなたは、次からのページを繰る手は止められなくなるでしょう。

     

     大人にも豊かな読書をもたらしてくれる作家たちを、その背景から紹介し、子どもの文学の特質を語ってくれる、具体的な物語も含め、後半は見事なブックガイドになっています。

     子どもの文学ならなんでもいいわけではないのです。クロスオーバー・フィクションたらしめる物語はいったい何があるのか、真の子どもの文学は幸福とは何なのかを伝えてきます。


     幸福のイメージがつかめない大人にはつよくおすすめします。 


     

    2016/09配信

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